東京高等裁判所 昭和36年(行ナ)112号 判決
原告主張の請求原因第一、二項の事実は、当事者間に争がない。そして、本件においては、原告の出願にかかる本願商標、すなわち、筆記体で書かれた「Hollywoodshine」のローマ字の下に「ハリウツドシヤイン」の片仮名文字を左横書きに併記して成り、第二類染料、顔料、媒染料および塗料を指定商品とする商標と、本願商標の出願前の出願登録にかかる引用商標、すなわち、筆記体で書かれた「Shine」のローマ字の下に「シヤイン」の片仮名文字を左横書きに併記して成り、第二類染料、顔料、媒染料および塗料ただし靴用塗料およびその類似品を除くを指定商品とする商標との類否が争点である。以下に、両者の類似について考える。
本願および引用両商標は、それぞれ右のとおりの構成からなる文字商標であるから、外観においては、ことに本願商標が、「Hollywoodshine」「ハリウツドシヤイン」と二段にそれぞれ一連に記載されていることに徴し、たがいに類似の範囲を脱する差異があるといえるとしても、その称呼および観念について考えると、つぎのとおりである。
本願商標は、アメリカ合衆国の地区名にかかる「Hollywood」とひかり、かがやき等の意味を持つ「Shine」の語とを連結したものであるが、これらの語は、観念のまつたく異なるものであり、いずれもわが国において一般にきわめてよく知られた語である。また、この両語は、本願商標において、いずれが圧倒的支配的な意義を有し、あるいは、一方が他方に従属するとにわかに断じ難いけれども、ひかり、かがやきの観念をもつ、「Shine」は、本願商標の指定商品である染料、顔料、媒染料および塗料に関連してこれをみるとき、その使用によるできばえのよさなど商品における多様な含蓄を暗示する語として、指定商品と結びつき取引者需要者の関心につらなるものをもつといえる。なお、本願商標は、「Hollywoodshine」、「ハリウツドシヤイン」と二連に呼称する場合、長めの称呼となる。ところで、いくつかの語の組合わせから成る商標が、迅速簡明にかつ多数回にわたり繰り返しおこなわれる商取引の実情においては、常に必ずしも正確にその全体をもつて呼称されるとは限らず、その一部が省略され呼称されることのあることは、しばしば経験されるところであつて、それは、外観においていくつかの語が一連に組み合わせられている商標についても、これを称呼観念の点からみるとき、その例外をなすものではない。本願商標について、多種多様な取引者需要者の考えられるその指定商品、染料、顔料、媒染料および塗料との関連において、以上の諸点を考慮しつつ、これをみると、その称呼が、構成上「Hollywoodshine」の全体から生ずることはもちろん少なくないであろうが、一方でまた、その一部である、「Hollywood」(ハリウッド)、ことに一番語音が少なく比較的顕著にひかり、かがやきの観念をもつ「Shine」(シヤイン)からも生ずるであろうことが、これまた右に比して少なくないと考えられる。
原告は、商標の観察にあたつて商標を一体として観察すべきであつて観念の結合性を商標類否の判断に供すべきではないと主張するけれども、いちがいにそのように断じ去ることができないことはいうまでもなく、本願商標についてみても、その一体としての称呼が生ずるほか、前示のとおりその一部について称呼の生ずることを否定することができないことは明らかである。
ところで、「Shine」「シヤイン」の文字で構成されている引用商標から「シヤイン」の称呼およびひかり、かがやきの観念の生ずることは明らかであるから、本願商標が引用商標とこの称呼および観念において類似するというべきこともまた明らかである。そして、引用商標における前示指定商品が靴用塗料およびその類似品を除くとはいえ、これと本願商標の指定商品染料、顔料、媒染料および塗料が同一または類似であることはいうまでもない。
右のとおりである以上、その余の点にわたつて判断するまでもなく、本願商標が引用商標と「Shine」「シヤイン」の称呼および観念において類似であり、旧商標法第二条第一項第九号に該当し登録すべきものでないとした本件審決は、結局相当であり、その取消を求める原告の本訴請求は理由がない。